梶山徹夫の馬券生活 - 愁思符庵日記 -

本物の博打屋が送る競馬ファン必読の競馬ブログ

2007年08月18日

『真夏の悪夢、競馬熱中症』

「中止は妥当な事だと思う。ただ、この間の預託料を誰が払うか、など問題は色々ある」

35年ぶりの中央競馬開催中止のテレビニュースを見ていたら、馬主の関口房郎氏がこのようなことを仰っていた。いかにも大馬主らしいな、と苦笑した。と同時に、所詮こんなもんだよ、と阿呆らしく思った。

開催危機の第一報は16日朝7時半の井出君からのメールだった。セゾンRHの担当者で前日から栗東に取材に行っていた。

その後、博打屋は美浦のトラックマンや調教師に問い合わせをしてみた。今週は知人たちの新潟入りもあり、宿や新幹線、車の手配が通い慣れた博打屋に任されていたからだ。
この時点では定かな結論は持っていなかったが、昼前のテレビニュースで中止のテロップが流れたのをチラリと見た。
急ぎ、宿のキャンセル。幸い新幹線はまだ購入前だった。

降って沸いた予期せぬ休日、さて商いはどうする、と燃え上がる「愁思符庵」の熱風の中で思案中、井出君からの第2報。栗東の調教師から、予定通り馬を使うとのこと、つまり開催決定。

「えっ?さっきのテレビは?」
結局、開催が確認出来たのは夕刻だった。

予定通り新潟行きを仲間に確認し、宿を確保したのが日付けの変わる時刻。阿賀野川上流、磐越西線の咲花温泉である。

朝もやの立ちこめる大河の緩やかな流れを見下ろす露天風呂は、遠く折り重なる山々の濃淡を背景に、水墨画の風情が味わえる、新潟競馬宿としては隠れた温泉地である。

明けて17日、新幹線レンタカーセットを手配し、帰宅したのが朝10時。すると井出君の第3報、中止報告。さて、汗だくの1日の始まりだ。松戸競輪の決勝を頭に、身はJR切符のキャンセルへ。我が町の緑の窓口ではあっさり30%の手数料宣告。「えっ」と驚くのは、世間知らずの博打屋だからか?まだ未使用、今し方買ったばかりだぜ。

まあ、こんなドキュメントはもういい。
井出君のメールにはもっと気の毒な会員さんの話。新馬出走で小倉まで行き空港で中止を知らされたという。

知人の保険屋U氏は一口持ち馬が札幌出走で、入手した航空券は変更が利かぬという。

「セリもあるので行って来ますよ」と浮かぬ声。

各方面から不満の声が届く。なかでも有難いのは「失業だろ、どうすんだ?」と長期戦も予測される事態に、博打屋の財政を心配してくれる電話だ。「心配するなら金をくれ」と答えるしかあるまい。

関口氏の言葉は、馬主の切実な経済面での懸念だが、金曜の中止決定は決して妥当では無い。事態を冷静に判断すれば、木曜決定の方が、末端のファンにとっての影響ははるかに少ない。

子細な例だが、ファンは身銭を切ってローカル開催に出かけているのだ。こうしたファンの無駄アシは誰が補填出来ると云うのか。

即座に馬主としての経済的負担に言及するのも人間的であるが、JRAからの何らかの補填は引き出せる馬主の立場はそれでよかろう。

声無きファンの声はどうなる。

「ファンあっての競馬」なんて陳腐なことは云ってもらいたく無い。こんな事態の時にこ
そ、真っ先にファンへの影響を優先させるべきではないか。

それにしても、失業保険のない博打屋は深刻である。

松戸競輪決勝は初日「競馬ばかりやってんじゃないぞ!」と野次られていた山田祐仁が勝った。馬主としてこの事態に危機感を持ったか、しっかり稼がれた。博打屋も読みが浅かった。

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2007年08月18日 08:44に投稿された記事です。

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梶山徹夫プロフィール

梶山徹夫

1949年広島生まれ、中央大学文学部国文科卒。コピーライターを皮切りに、広告制作、音楽事務所経営、ルポライター、競馬雑誌編集長を経てフリーに。全国の競馬場に出向き、競馬に関わるエッセーを雑誌等に寄稿。著書に「馬券で喰ってどこが悪い」等。

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