梶山徹夫の馬券生活 - 愁思符庵日記 -

本物の博打屋が送る競馬ファン必読の競馬ブログ

2007年10月23日

『一瞬の堅気』

「あんたかい?最近越してきたってオヤジは。ゴミだししてるってこたぁ、一人もんだね。まあ、事情は良いって事よ。畳となんとかは新しいのに限るって云うぜ。頑張りな、俺っちは、あっちのほうはもう元気ないけど、畳だけは贅沢してるぜ、ホレ御覧の通りだ」

背後から、確かにこのような声がした。

4年前にこの町に越してきてまもないことだった。

「愁思符庵」の向こう隣にあるゴミ集積所でのことだ。

「はて?そう云うお主は」と辺りを見回せど姿無し。

空耳かいな、と目に入ったのが、道を挟んだ向かいにある畳屋。

その店先の台付きの小さな畳に寝そべって博打屋を見つめている猫。

目があった。

そ知らぬ顔で見ている

後ろの土間では、主人が畳針を小気味よく刺しては抜き、辺りに真新しい畳表の香りを漂わせている。


「なるほど、そーかい」

博打屋は道越しにしばしその風景に見とれていた。

その畳屋の猫「小僧」のことを、今発売中の「猫びより」(日本出版社)で ムッシュ徳岡氏の写真とともに4ページ記事で掲載している。

社長の矢崎氏は、矢崎泰久氏の弟。
猫雑誌だけに、編集部はみな猫好き。

動物写真家の岩合光昭氏や今売れっ子の新見敬子氏の写真など、いずれも名うての動物人種。

昔とった杵柄ではないが、博打屋の唯一の堅気仕事を社長がプロデュースしてくださるのだ。

菊地寛ゆかりの出版社だけに、関係者には競馬好きや麻雀好きが多い。

畳屋そのものが少なくなってきている昨今、この多摩の里に残る職場風景はどこかホッとさせてくれる。

いつも新しい畳に囲まれ、専用畳台をもつ猫など、そうそういまい。

「愁思符庵」の畳は勿論、女房も新しくなりはしないが、「小僧」の励ましは心している毎日である。

今日(23日)は京王閣開設記念ゴールドカップレースの決勝。

向日町(競輪)から帰ってきた知人のN嬢も皆勤だとファックスしてきた。

1〜2コーナーの金網にしがみついて「栗田!」なんて声援してるらしい。

シャーと9選手の一群がバンクを疾走する、その臨場感がなんとも云えないのだそうだ。

しかも、過ぎ去ってしばらくして漂ってくる選手達の男の香りがいいんだと。

やっぱり、変な娘にゃ違いない。


選手が太ももに塗るオイルの匂いらしいが、過ぎ去った選手の後ろ姿を追いながら、恍惚と香りに包まれ、金網に頬を押しつけている娘の姿。


あまり見たくはないが、競輪に惚れた女を盗み見するのも、秋の一日の趣だろう。

決勝は長塚か後閑だろう。

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2007年10月23日 12:09に投稿された記事です。

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梶山徹夫プロフィール

梶山徹夫

1949年広島生まれ、中央大学文学部国文科卒。コピーライターを皮切りに、広告制作、音楽事務所経営、ルポライター、競馬雑誌編集長を経てフリーに。全国の競馬場に出向き、競馬に関わるエッセーを雑誌等に寄稿。著書に「馬券で喰ってどこが悪い」等。

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