『惜別競馬』
秋田は大仙市、かつては大曲市と言っていたその町から知人の馬主の佐藤氏が上京された。
記録的大雪の地元から、まるで寒波を連れて来たような寒さ。
13日、中山で久々の馬券に挑み、難解なレース結果に渋い顔しきり。
東京の方が絶対寒いと震えていた。
こちらとしては、秋田から寒波を連れてきたと震え上がっていたのに。
その氏を待っていたかのように、病床の知人が成人の日の朝、旅立ってしまった。
前夜見舞ったのが最後となった。
人の運命とは言え、還暦で召されるのはいかにも無念。
付き合いの長い氏の見舞いが、安らぎを呼び起こしたか。
よもやの翌日の訃報である。
昨年定年を迎えたばかりの元競馬ブックトラックマンの小宮均氏である。
発病から3年。
懸命に職場復帰を目指した気力も、運命には逆らえなかった。
ただただ合掌。
皮肉なものである。
底冷えのするこの日は成人式。
輝かしい社会人として出発する若者の陰で、ひっそりと人生を終える人もいた。
訃報を博打屋は京王閣競輪場で聞いた。
3連休の最終日。
人の出はいつになく多い。
2日間、ふがいないレースを見せた山田裕二が、三度人気を裏切り敗退した。
厳しいファンの罵声を受けながら選手はレース後、バンクを一周する。
ファンも選手もこの周回で競輪と向き合う。
競馬にもこうした一瞬があれば、ファンも騎手も成長するのだがな、とバンクを見下ろしていた。
飛翔する若者と旅立つ壮年。
惜別車券は微妙にずれたが、この冷たさだけは忘れられぬだろう。
佐藤氏と供養の通夜。
明日15日の大井競馬で氏の馬が走る。
水沢からの転入馬だ。
10R、トーホーカムカム。
その走りに博打屋は賭ける。
相手は総流し。
惜別競馬としたい。
